このコンサートシリーズ、今日が第47回目ですが、先月初めてお休みをしました。上海、韓国、山形県庄内,そして再び上海と本当に忙しい一ヶ月でしたが、また同時に充実した時間でもありました。

　今回のテーマは「ギターが語る時」、少し抽象的なタイトルです。私達が楽曲を演奏する時、演奏者は作品の「最善の姿」を追い求めて演奏している筈です。それはあたかも建物の設計図を正確に追う建築家の目にも似ているはずです。音の強さや音色、適正なテンポやその変化・・・、全てが重要な要素です。

　しかしそういった事と同時に、作者がその作品の中で語ろうとしたメッセージや、その作品が生まれる経緯などが、重要な場合もあるのです。武満徹がなぜギターのためにポップスを編曲したのか・・・、超絶技巧の持ち主ジュリアーニがこれほどまでに簡素な音楽を書いていたのは何故なのか・・・、ブローウェルにとって「黒いデカメロン」という作品が持つ意味とは何なのか・・・、そんなことを考えながら弾いてみる、聞いてみるといつもとは違った何かが聞こえてくる筈です。中でもF.ソルの「作品44」は彼の作曲家人生の集大成とも言える「ギター教則本」を上梓した翌年に出版されており、そこには彼の演奏家／作曲家としてのあらゆるメッセージが込められている、・・・とさえ私は思うのです。しかもそれは1831年当時のパリのギタリスト達だけに対してではなく、現在の私達にも深い意味を持っています。

　こういった経緯や背景をギターが語り始めた時、やっと「音楽がはじまる」と私は思うのです。 （藤井眞吾／2010年9月25日）

program
1.《イエスタデイ》＆《秘められた恋》（武満徹 編曲）
　 2 arrangements by T.Takemitsu 　 Yesterday by Beatles / Secret Love by S.fain

2.前奏曲とバガテル（M.ジュリアーニ） 　 M.Giuliani: Preludes & Bagatelles, Op.100 & Op.73
　　 -1.　Grazioso & Andantino (in G)
　　 -2.　Affetuoso & Allefretto (in E)
　　 -3.　Allegro & Grazioso (in F)
　　 -4.　Allegro & Minuette (in B)

3.黒いデカメロン（L.ブローウェル） 　 L.Brouwer: El Decameron Negro (1981)
　　 - 戦士の竪琴
　　 - こだまの谷からの恋人達の遁走
　　 - 恋する乙女のバラード

4.《漸進的小品集 Op.44》（F.ソル）
　 F.Sor(1778-1839); 24 pieces progressive, Op.44
　　- No.1 ハ長調 4/4 Andante
　　- No.2 ハ長調 2/4 Allegretto
　　- No.3 ハ長調 3/4 Andantino
　　- No.4 ハ長調 2/4 Allegrtto Moderato
　　- No.5 ハ長調 3/8 Andantino
　　- No.6 ト長調 3/4 Moderato
　　- No.7 ト長調 2/4 Andante allegro
　　- No.8 ト長調 2/4 Allegretto
　　- No.9 ト長調 4/4 Andantino
　　- No.10 ト長調 6/8 Allegretto
　　- No.11 ホ短調 4/4 Andante
　　- No.12 ホ短調 6/8 Andantino
　　- No.13 ホ短調 3/8 Allegretto
　　- No.14 ニ長調 3/4 Minuetto
　　- No.15 ニ長調 2/4 Andante
　　- No.16 ニ長調 2/4 Andante
　　- No.17 ニ短調 3/4 Cantabile
　　- No.18 ニ長調 4/4 Marche
　　- No.19 ニ長調 6/8 Allegretto
　　- No.20 イ長調 2/4 Andantino
　　- No.21 イ長調 3/4 Andante
　　- No.22 イ短調 2/4 Andantino
　　- No.23 イ短調 6/8 Allegro moderato
　　- No.24 イ長調 3/8 VALSE　　

●チケット/前売\3000 　当日￥3500
●主催/ マンサーナ Manzana Tel.075-972-2834
●企画 /藤井眞吾/ http://homepage3.nifty.com/shingogt/
●会場/アートステージ567