7月21日と24日に、山陽小野田市と日向市で「はじまりの音楽」出版記念として演奏会をして参りました。これは日本の民謡や文部省唱歌を「教材」として、先生と生徒が一緒に演奏できるように編曲した曲集です。いずれも大変好評でした。
最近「演奏会では知っている曲を聴きたい」という声を耳にします。演奏者としては、聴衆の意志や希望は最大限尊重したいとは思っていますが、実は一人の聴衆として私はそのようなことを未だかつて一度も思ったことがありません。だから、実を言うと、そのようにおっしゃる方の気持ちがあまりわからないのです。私は演奏会で知らない曲に巡り会うことが大好きですし、またそのために生の演奏を聴きに行っていると言っても過言ではありません。だからと言って、知っている曲が演奏されることを「損をした」なんて思うわけではありませんし、有名な曲が並んだプログラムが嫌いな訳でもありません。端的に言えば「有名な曲を弾かなければお客さんは入らない」などと言う考えが嫌いですし、仮にそういうことが実際にあったとしても、それは音楽にとっては百害あって一益無しと言うものだろうと思っています。生の演奏の価値を見失ってしまうからです。
件のコンサートでは「はじまりの音楽」が有名な日本の曲だから好評だったとは思っていません。生意気に聞こえるかもしれませんが、私とそしてそれを演奏してくれた共演者の演奏が良かったから・・・、そして編曲が良かったから・・・、そう信じて疑っておりません。今日もギターの有名な小品集を弾きます。しかしそれは「こんな曲を弾いたらお客さんが喜ぶから・・・」なんて言う気持ちではありません。これは全部「良い音楽」であり、何よりも私自身が好きな曲だからです。そして全く同じように、私はブローウェルの「黒いデカメロン」が好きです。だから、何度も何度も弾くのです。・・・聞いて欲しいと思うから弾くのです。名作です、もう一度「黒いデカメロン」、お聞きください。
(藤井眞吾/2010年7月30日)
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