ちょうど100年前の三月、アメリカでの公演を終えて帰国の途についていたグラナドスの乗る船は英仏海峡を航行していましたが、ドイツ軍の潜水艦による攻撃で、その生涯を閉じることになります。1916年の3月24日のことでした。グラナドスの音楽や、その当時の音楽を振り返ってみたいと思います。（藤井眞吾）

program note
　ギターと言う楽器は、ほかの楽器のために書かれた作品をギター用に編曲し演奏することがしばしばありますが、それはギターが持つ柔軟な表現力のせいだろうと私は思います。J.S.バッハの時代には現在のようなギターはまだ誕生していませんでしたが、バッハの無伴奏バイオリンやチェロのための独奏曲はギターにとっても重要なレパートリーであるといえます。19世紀から20世紀にかけて、スペインにはF.タレガと言う名手が登場し、彼は数々のオリジナル作品を残しますが、同時にその数をも凌駕するほどの編曲も残しました。タレガとほぼ同時代に活躍した二人のピアニスト／作曲家、エンリケ・グラナドスとイサーク・アルベニスの作品は多くのギタリスト達の手によって編曲され愛奏されています。単にスペインの作曲家だからと言う理由ではなく、やはり彼らの作品が魅力に溢れているからだと私は思います。
　本日はグラナドスの作品の中から「トナディーリャ」の一曲、ギターでは滅多に演奏されない「悲しみに沈む女-II」と言う曲をお聞きください。

私にはまだあなたの死が 本当なのだと思えないの
唇にキスをしよう そして、あなたの運命まで わけてもらうの
慰めもない孤独な世に 狂おしいまで思うひとは 冷たくこそなっても
私だけの恋人なのよ ああいつまでも

（藤井眞吾：記／2016年3月26日）

今月の「プレゼント編曲」は、《悲しみに沈む女II》（E.グラナドス／藤井眞吾 編曲）でした。

program●
1. スペイン舞曲 No.5《アンダルーサ》（E.グラナドス／藤井眞吾 編）
E.Granados (1867 - 1916); Danza Espanola No.5, Andaluza

2. 3つの練習曲（F.ソル）
F. Sor (1778 - 1839); 3 studies - Op.33-22
ロ短調 Allegretto - Op.6-2
イ長調 Andante allegro - Op.33-17
ニ長調 Moderato

3. 《マルボローは戦争に行った》による変奏曲（F.ソル）
F. Sor (1778 - 1839); Variations sur l’air : Malborough, Op.28

4. 四つの作品（F.タレガ）
F. Ta´rrega (1852 - 1909); Preludios y 《Capricho a´rabe》
- 前奏曲 ニ長調Preludio en Re mayor
- 前奏曲 ニ短調Preludio en re menor (Endescha y Oremus)
- アラビア奇想曲Capricho a´rabe
- ワルツ ニ長調Vals en Re mayor

5. 《エストレリータ》と《ワルツ》（M.M.ポンセ）
M.M.Ponce (1882 - 1948) : Estrelita y Vals

6. 悲しみに沈む女 - II（E.グラナドス／藤井眞吾 編）*
E.Granados (1867 - 1916); La maja dolorosa - II

7. 《簡素な練習曲集》より（L.ブローウェル）
L.Brouwer(1939 - ); from “Estudios Sencillos”
No.2 No.8 No.11 No.19 - 20 ... etc.

8. スペイン舞曲 No.2《オリエンタル》（E.グラナドス／藤井眞吾 編）
E.Granados (1867 - 1916); Danza Espanola No.2, Oriental

（*）プレゼント編曲

●チケット/\3000 　当日￥3500　4回券￥10000　6回券￥14000
●主催/ マンサーナ Manzana Tel.075-972-2834
●企画 /藤井眞吾/ http://homepage3.nifty.com/shingogt/
●会場/アートステージ567