シェークスピアの「真夏の夜の夢」をもとに、B.プリテンは同名のオペラを作曲しましたが、直後に作曲したギターのための「ノクターナル」は同じく「夜」とか「夢」とか、あるいは「死」をテーマにした作品です。シェークスピアと同時代のリュート奏者、J.ダウランドの歌曲「来れ深き眠りよ」を主題とした変奏曲ですが、このブリテンの大作や、ダウランドのリュート曲など、夢とか、夜とか、そんなことを考えながらお聞き頂ければと思います。（藤井眞吾）

program note
　先月は100回目と言うことで沢山の方から祝福を頂きました。こんな幸せなことはありません。ところが私自身はこのコンサートシリーズをこんなにも沢山の回数やって来たという実感があまりないのです。それはきっと、ここでやりたいことがまだまだ沢山あると感じているからなのかもしれません。 　さて本日は第101回目、いわば「新しいスタート」なのですが、これまでと違ったことを始めようという気はございません。私がいつも感じている、興味深い音楽、そして美しいギターの音楽を少しでも多く皆様に聴いて頂きたい、ただ、ただそう考えるだけです。

　「真夏の夜の夢」というタイトルは云うまでもなく、シェークスピアの有名な戯曲のものですが、それから300年以上を経た1960年に、イギリスの作曲家、B.ブリテンはそれに基づくオペラを作曲しました。そのころブリテンは「夜」「夢」「眠り」「死」などの言葉に深く関連した作品を書いています。本日お聞き頂くギターのための大作「ノクターナル（夜想曲のように）作品70」もそのひとつです。シェークスピアと同じくエリザベスI世の時代に活躍したリュート演奏家、J. ダウランドの歌曲「来れ深き眠りよ Come Heavy Sleep」をもとにした変奏曲です。

　今年の京都の夏も大変暑い日々が続きました。「はて、去年はどうだったろうか？」と考えてみたのですが、思い出せません。それもそのはず、ほぼひと月、ドイツとアイスランドにおりましたので、帰国したときの厳しい残暑のことしか思い出す事ができませんでした。私は、今夜の音楽会が、皆様にとって「真夏の夜の夢」となることを願っております。 （藤井眞吾：記／2015年8月28日）

今月の「プレゼント編曲」は、グラナダ（I.アルベニス／藤井眞吾 編）でした。

program●
1.　エストレリータ（小さな星）（M.M.ポンセ／編曲 J.L.ゴンザレス）
　　M. M. Ponce (1882 - 1948): Estrellita (arr. by J. L. Gonzalez)

2.　夜想曲（E.グリーグ／編曲 藤井眞吾）
　　E. Grieg (1843 - 1907): from “Lyric Pieces” Notturno (Op.51-4)

3.　 四つの作品（J. ダウランド）
　　J. Dowland (1563-1626); 3 pieces for Lute
　　　- 前奏曲 Prelude
　　　- オルランドは眠る Orlando Sleepth*
　　　- ダウランドの真夜中 Dowland’s Midnight*
　　　- ファンシー Fancy

4.　ノクターナル（B. ブリテン）
　 　　 B. Britten (1913 -1976); Nocturnal after J. Dowland (Op.70)

5.　《さくら》幻想曲（藤井眞吾）
　　Shingo Fujii (1954 - ); Sakura Fantasy (2015)

6.　《簡素な練習曲集》より12曲（L.ブローウェル）
　　L.Brouwer(1939 - ); 12 Estudios from “20 Estudios Sencillos”

7.　《グラナダ》 ＆ 《入江のざわめき（マラゲーニャ） 》（I.アルベニス／藤井眞吾 編）
　　I.Albeniz (1860 - 1909) ; 《 Granada 》 & 《 Rumnores de Caleta (Malaguena)》

（*）プレゼント編曲

●チケット/\3000 　当日￥3500　4回券￥10000　6回券￥14000
●主催/ マンサーナ Manzana Tel.075-972-2834
●企画 /藤井眞吾/ http://homepage3.nifty.com/shingogt/
●会場/アートステージ567